2011年11月27日 (日)

ブエナビスタ対4歳馬

■東京11R 第31回ジャパンカップ

◎ 7.ペルーサ
○ 2.ブエナビスタ
▲ 6.トゥザグローリー
注 15.エイシンフラッシュ

最強馬・ブエナビスタを何が負かすか。有馬記念ではヴィクトワールピサに、ヴィクトリアマイルではアパパネに、宝塚記念ではアーネストリーに敗れたが、それぞれ相手が得意とする条件での敗戦だった。得意の東京中距離なら、というのがこの二連戦。不利もあって天皇賞を落としたため、年齢的にもこのジャパンカップは最後のチャンスだろう。

そのブエナビスタを対抗に回して、本命はペルーサで行きたい。昨年の青葉賞以来勝ち星から遠ざかっているが、それは同世代があまりにもタレント揃いのため。東京中距離ならばこの馬を一番に見るべきだろう、と思ってダービーでも本命にしたし、昨秋の天皇賞でも本命にした。ダービーと昨年のジャパンカップは、ゲート難があって勝ち負けにならなかったが、それが解消した以上、この馬から逃げるのは論理矛盾だろう。前走は休み明け。今回は言い訳できない。私も自身の評価を貫く。

トゥザグローリーは青葉賞までは世代ナンバーワンの評価だった。好みのレース質はペルーサと似ているようで、ワンツーしたことが二回あるし、だいたいいつも同じような着順になる。セットで考える。エイシンフラッシュが勝ち味に遅いのはペルーサ同様で、豊作世代ゆえの悩みと言える。東京2400なら見直すのが当然だが、鞍上を固定できないのはマイナス。初騎乗でどこまで能力を引き出せるか。

凱旋門賞馬デインドリームは坂上で切れる脚を使えないと思う。位置どりでよほど工夫をしないかぎり、4着か5着に敗れるだろう。位置どりで工夫が利きそうなのは、ルメールが乗る凱旋門賞2着のシャレータの方で、3着の穴ではあるが、ジャパンカップの最終予想で採り上げるほどでもない。

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2011年11月13日 (日)

円高万歳!

■京都11R 第36回エリザベス女王杯

 スノーフェアリーは去年のこのレースを勝ったあと、香港カップも制覇。今シーズンは英愛のチャンピオンステークスと凱旋門賞でも小差の競馬を続けてきて、いまや名実ともに「世界のスノーフェアリー」になった。この馬が出走していることで、エリザベス女王杯がヨーロッパでも注目されるレースになっている。結果としてエリザベス女王杯の価値を高めることにも繋がった。円高万歳!

◎ 18.スノーフェアリー
▲ 2.イタリアンレッド

 スノーフェアリーは今年はハンデとして(笑)大外枠をもらったが、外々を回って押し切ってもおかしくないだけの実力差はある。ただし、直線が平坦の京都だけに展開的な紛れが生じる余地は想定しておくべき。たとえばスローペースになったとき、ロスなく立ち回った絶好調の馬の一発イン突きとか。ということで逆転候補にはイタリアンレッドを推す。一瞬の脚に優れたタイプで長い直線よりは小回り向きだが、前走では府中で勝ったのだから馬が相当充実している。G1でここ一番の仕上げをしてくる石坂厩舎というのも不気味だ。

■東京11R 第16回東京中日スポーツ杯武蔵野S

 今年は南部杯がJRAのレースになったので、そこからの折り返し組がいて、例年になく勢力関係は見やすくなっている。だけど、見えすぎちゃって気を抜くと落とし穴があったりもする。

◎ 7.タイセイレジェンド

 タイセイレジェンドは芝を走っている頃から好馬体に惚れ惚れしていたが、ダートで主導権をとる競馬が板についてからあっという間にオープンに上がってきた。前走は1400で勝ったが、大きくて柔らかい走りをするので1600の方がより良さが出る。初のオープン挑戦だった春のオアシスSでは、人気でマークを受ける形ながら小差4着。当時よりパワーアップしているし、ここは人気の盲点になっている。すんなり運べれば勝っても不思議ない。

■東京9R 赤松賞

 メンディザバルを配して勝ちに来たトランドネージュ。前走サフラン賞はロスの多い競馬で強い2着だったが、今後のためにもここは勝つ必要がある。

◎ 12.トランドネージュ

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大外一気、京王杯はレオアクティブが快勝

 土曜の芝のレースはよく荒れた。6Rを5番人気で勝ったノーステアと8Rを9番人気で2着したアカリの母父が両方シルヴァーホークだったのを見て「ん?」と思った。スタミナがある馬が来ている。8Rが終わった段階で次のようにツイートした。

馬場状態的には、モンストールは嫌う方向でいいね。モーションが大きい馬が来るイメージ。

 ジャパンカップが開催されようとする時期で、この時期の東京芝コースは例年スタミナを要する状態になる。スピード優先の夏の新潟とは逆ベクトルだ。モンストールの父アドマイヤマックスは、その母父に短足血統のノーザンテーストが入り、脚捌きがシンプル。新潟で強かったのも納得だが、いまの府中では走りにタメが利いた方がいい。血統の字面としては「ヨーロッパの香りがする馬」。だったら、10Rはトライアンフマーチ(母父ダンシングブレーヴ)しかないだろうな。当たり。みたいな馬場読みを踏まえて、メインレース・京王杯2歳ステークスを迎えた。

 モンストールはメンバー中唯一の重賞勝ち馬で、単勝オッズは160円にまで下がったが、ここまで人気が集中したのは逆にメンバーレベルの低さの表れだったかもしれない。続く2・3・4番人気が1勝馬。将来性はともかくとして、ほんらいなら完成度優先の2歳短距離重賞としては練度の低い馬たちの集まりになった。そして、そのなかでキャリア豊富な馬のワンツーで決まった。

 勝ったレオアクティブはここまでキャリア5戦で、オープン、500万で2着があった。そしてなにより母父オペラハウス。折り合いに難があってマイルの芙蓉Sは敗れたが、戦術が固まっているのは使われている強みだ。最後方で折り合いに専念するだけ。外が伸びる馬場の助けもあったが、坂下まで持ったままの手応えだったから、ここでは力が上だった。中一週でマイナス14キロ、華奢に映る体つきだったが、けっして細くはなかった。朝日杯に向けては中山替わりは問題なく、再度の距離延長で折り合いがカギになる。

 2着したサドンストームはキャリア4戦で、モンストールを除けば唯一の2勝馬だった。馬群に入ってゴチャつくところもあったがへこたれずに捌いて、最後まで渋太く伸びて2着を確保した。これに競り落とされたのがオリービン。この距離を使うのは初めてだったが、すんなり好位をとってスムーズな競馬。直線で最初に馬群から抜け出したのはこの馬だった。しかしいまの東京だと、そこでもうひとつ我慢ができる馬が勝つ。この馬の場合は、栗東から初めての長距離輸送で馬体重が大幅に減っていた影響もあったろう。

 モンストールはゲートをよろめいて出て後方追走。もともとスタートの良い方ではなく、直線入口では外から抜け出すかの勢いだった。直線の坂に差し掛かったところでフラついて伸びきれなかったので、敗因は初経験の坂ということになるのだろうか。合わない条件でも大きくは崩れずに4着に残ったのだから、私は逆に「力があるな」と感心した。器用さが活かせる中山は悪くないはずで、これで見切らず朝日杯では見直したい。

 ダイワインスパイアは逃げて直線で突き放して見せ場充分だったが、最後垂れて7着。折り合いに難がある馬で、単騎で逃げながら道中はずっと気負っていて、息が入っていなかった。初戦で手綱を取った北村宏司騎手が負傷して乗れなかった影響は小さくなかったと思う。府中の重賞を逃げ切るのは難しい。むしろ中山の方が競馬がしやすいはずで、次走は1200でもマイルでも500万でもオープンでも買う。馬は良くなっていた。

 ゲンテンは馬体が素晴らしかったのでツイッターでも誉めて、折合さえつけばと書いた。外の2番手で折り合いはバッチリ。しかしそこからさっぱり伸びなかった。ここらへんがコテコテのアメリカ血統、脚をためたところで一銭にもならないということか。ヨーイドンの形は苦手なのだろう。芝がダメとは言わないが、いつかダートに出てきたら忘れずに買おう。

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2011年11月 8日 (火)

大穴の騎手心理

 先月末に出た谷中公一さんの新著『大穴の騎手心理』(競馬王新書)。競馬王で好評連載中の谷中さんの騎手インタビューに、新章として蛯名騎手に登場してもらって、さらに加筆もガッツリ、という本だ。

 今週末はエリザベス女王杯だって? この本には、一昨年のエリ女をクィーンスプマンテで逃げ切って大穴を出した田中博康騎手も登場している。

谷中「普通、逃げたときってあれこれ考えちゃって難しいんだよね」。
田中「馬群に入っちゃったら流れに乗っていくしかないですからね。そういう意味では、逃げって不安になりますね。でも、あのときは不思議にならなかったんです」。
谷中「それだけ馬の感触が良かったんだよね」。

 そうか、「逃げる」って不安なんだ。そんな騎手たちの感覚、本音を引き出せるのも、聞き手が元騎手の谷中さんだからこそ。ファン側の言葉を騎手たちの言葉へと、谷中さんが通訳してくれる感じだ。

 私も何度か騎手の方にインタビューしたことがあるが、上っ面をなぞるだけでまったくかみ合わないインタビューだったなあ、どれもこれも。レースというのは外から見ているだけの人間にはなかなか想像が及ばない世界だ。最大18組の人馬が押し合いへし合いするのだから、基本的には思うに任せないものがある。

 それでも、ファンは言わずにはいられない。位置取りがどうこう、仕掛けのタイミングがどうこう、追えるだの追えないだの。基本的には門外漢のトンチンカンな意見ではあるが、でも結果的にそれが正しかったりする場合もままあって、侮れない。われわれも伊達にお金を賭けているわけではないのだ。

 「谷中さん」というフィルターを通して、ファン的・馬券的な質問を騎手にぶつけてできたのがこの本だ。こういう本はかつてなかった。ファン的な視点と、騎手の視点と。二つの視点を行き来しながらレースを見られるようになったら最強だろう。レースがわかる。馬券も当たる。そんな夢が現実になるかもしれない。

 まあ難しいことは抜きにしても、楽しく読んで騎手たちが身近に感じられるようになることは間違いない。登場する騎手は、蛯名、川田、田辺、石橋脩、和田、松岡、大野、古川、丸田、酒井、木幡、武士沢、田中博康、大庭(敬称略)。彼らがいかにリラックスして語っているかは、巻頭のカラー口絵を見ればわかる。

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2011年11月 3日 (木)

矛と盾、激突

 地方競馬の祭典、JBCが本日、大井競馬場で開催される。メインイベントのJBCクラシックでは、トランセンドとスマートファルコンが激突する。昨秋の日本テレビ盃では同タイムの2・3着に終わりフリオーソの軍門に降ったが、その次戦から両馬の快進撃は始まった。かたや国内G1を3勝でドバイWCでも2着、かたや三つの国内G1を含む重賞6連勝。両馬のひさびさの対決は、芝ダートかかわらず、日本競馬最大の切り札カードと言っていい。地方競馬側としては舞台だけ提供して脇に回る形だが、いまやダートにおいては地方も中央も関係ない。ダートのスターホースは両主催者の共有財産だ。少なくともファンの認識はそうなっているし、出し惜しみをせずにここに挑んできた両馬の陣営には拍手を送りたい。

■大井11R 第11回JBCクラシック

 トランセンドを上に見る。

 スマートファルコンは昨秋の日本テレビ盃で馬体的な完成期を迎えたが、トランセンドは1歳年下。この1年で着実に成長している。とくに前走南部杯時に見せた研ぎ澄まされた姿には風格さえ感じさせた。均整のとれた馬体で一見すると大型馬とは思えないのに、馬体重は518キロある。スマートファルコンも同じような馬体重だが、こちらは迫力たっぷりでいかにも大型馬という印象。逃げの戦術を選ぶことによって連勝が始まったが、裏を返せば極端な競馬でストライドを維持させないと能力を出し切れないということでもある。シャープな馬体で自在に動けるトランセンドとの差はここにある。拮抗したスピードを持つトランセンドがいる以上、スマートファルコンにとって楽な競馬にはならない。強い相手に揉まれた経験値も含めて、トランセンドが上の評価になる。

 人気的には大きく離されているが、シビルウォーもこの連勝で馬が変わっている可能性がある。少なくとも馬が(勝つことに)目覚めているのはたしかだ。地元期待のテラザクラウドも含めて4頭、きっちり買う。

◎ 9.トランセンド
○ 10.スマートファルコン
▲ 1.シビルウォー
△ 12.テラザクラウド

■大井10R 第11回JBCスプリント

 セレスハントは前走が素晴らしい仕上がりで、59キロをものともしない勝ちっぷりだった。上積みは充分、コース実績もあって枠順も良い。

◎ 10.セレスハント

■大井9R 第1回JBCレディスクラシック

 4歳秋を迎え、馬体から硬さが抜けて充実期を迎えるミラクルレジェンド。大井への適性でもライバルを上回る。

◎ 4.ミラクルレジェンド

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2011年11月 2日 (水)

1561

 曇り空の東京競馬場。電光掲示には赤文字が灯っているからレコードなんだろうなとは思うが、肝心の数字が眩くてよく読み取れない。1分56秒台? そんなはずないよな、と思いながら駆けつけた検量室前。着順表示のホワイトボードには「1.56.1」と記されていた。とんでもないものを見てしまった。これも競馬だ。サラブレッドは想像できないような能力を秘めている。

 大逃げのシルポートはともかく、宝塚記念の勝ち馬アーネストリーは捨て置けない。大外枠から出たアーネストリーは内に入れず口を割りながら3番手の追走。その直後にエイシンフラッシュ、さらにローズキングダム、ブエナビスタ、ダークシャドウ。有力馬の大半が先行集団に入り、速いペースなのに馬群のパックは崩れない。我慢くらべ。意地の張り合い。ペース判断としては、離れた第二集団を行ったペルーサの横山典弘騎手が正しかったのだろう。ある意味狂気じみたラップを継続したまま、隊列は直線坂下まで行ってしまう。

 まず先頭に躍り出たのはエイシンフラッシュ。それを目標に外からトゥザグローリー。またその外からトーセンジョーダン。その間に突っ込むダークシャドウ。一番外からペルーサ。ブエナビスタは混み合う内に入ってスペースが見つからない。東京芝2000mでは未知の領域となる1分56秒台に突入していったのは、この6頭だった。

 トーセンジョーダンは先行集団の一番後ろにいた。ピンナ騎手が「もう少し距離がほしいと思った」と語ったように、気合をつけつつ必死でついていったが、それが功を奏した。坂上でエイシンフラッシュを抜いて先頭に立つと、ゴール板までまっしぐら、足取りが乱れない。最後の1Fは11秒8。馬群の切れ目追走から直線では外、ノーブレーキで突っ走って盾をもぎ取った。

 ダークシャドウはまた間を割って伸びてきた。この馬の精神力は素晴らしい。パドックではいつも集中して凛々しい表情をしている。精神力の強さはサラブレッドの美点のひとつだ。直線で外に出すのに手間取って、そのときに横をすり抜けていったトーセンジョーダンに大魚をさらわれた格好だが、ゴール前で内に切れ込んでしまったようにもう余力はなかった。精一杯の2着。

 ペルーサにはなにが足りなかったのか? 2008年、ウオッカとダイワスカーレットで決着したひとつ前のレコード秋天で、後方一気で微差4着に突っ込んできたのがカンパニー、鞍上は横山典弘騎手だった。ペルーサもまた追い込んで届かずの3着だから、位置取りの差のようにも見えるが、じつは坂下では差のないところまで追いついていた。厳密に言うなら、トップスピードに乗るのが遅かったための敗戦と考えるべきだろう。ジャパンカップでは今回より瞬発力が求められるはずで、けっして簡単な戦いにはならない。出走が叶えばの話だが。

 ブエナビスタにはゴチャついて可哀想な競馬になった。岩田騎手は自分を責めているが、あそこから外に出すとしたらダークシャドウよりもさらに追い出しが遅くなったはずで、レースの綾としか言いようがない。今回の敗戦で衰え云々が言われそうだが、身体的にはなんの問題もないし、精神的にももともと闘志を前面に出すタイプでもない。他の馬が成長しているぶん相対的な戦力比較で差を詰められてはいるが、この馬自身は依然として高いレベルを保っている。私としては、この一戦でこの馬への評価が揺らぐことはない。つまりナンバーワン評価。

 最後に一言。残念ながらレース中にメイショウベルーガが故障したことで、またまた高速馬場批判が出ているが、稍重馬場だった前週もスーパープライドが同じ故障を発症している。しばらく降雨がなかったことで馬場が硬くなっていたことは間違いないが、反射的に故障と結びつけるのは無理がある。

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2011年10月30日 (日)

東京特化許可局

 ブエナビスタが追いきりで遅れたことが不安視されているが、父スペシャルウィークの現役時代にもまったく同じことがあったのを思い出したファンも多いだろう。京都大賞典を7着に敗れたスペシャルウィークは、天皇賞の直前追い切りで格下の牝馬の後塵を拝したことで、当日は4番人気まで評価を落とした。「もう終わった」的な見放されかたをしたが、結果は追い込んで快勝、ステイゴールドと組んだ馬連は万馬券になった。なんのことはない、宝塚記念の1~3着から不出走のグラスワンダーを抜いただけの結果だった。わずか4ヶ月前のレースだから、天皇賞を考える上で宝塚記念の結果は非常に重い。

 ブエナビスタは直線で何度も手前を替えながら加速していく。キレが武器の馬で東京競馬場に特化したセッティングになっている。今回自分の庭に帰ってきてアーネストリーに借りを返せるか。アーネストリーの父はグラスワンダーだから、今春の宝塚記念はスペシャルウィークがグラスワンダーに力負けした1999年宝塚の再現だった。グラスワンダーは宝塚の後順調さを欠いたため、スペシャルとの再戦は年末の有馬記念までお預けになる。死闘の末わずか4センチの差で返り討ちにあって、結局スペシャルはグラスに勝てないまま現役を引退したが、もし東京で対戦できていたら別の結果になったに違いない。幸いにして、娘のブエナビスタにはリベンジの機会が与えられた。

■東京11R 第144回天皇賞(秋)

◎ 5.ブエナビスタ
○ 18.アーネストリー

 今年の4歳馬は最強世代と言われるが、層の厚さと個々の馬の強さに直接的な関係はない。ブエナビスタの到達点は高く、ヴィクトリアマイルも宝塚記念も自身は時計を詰めている。衰えを云々するのは失礼だろう。

 アーネストリーに大外枠は不利に違いないが、他の有力馬とは枠順的にも位置取り的にも離れていて、いわば見えにくい位置で競馬をできるのはメリットだ。東京の芝コースは今週から仮柵が設置されているが、仮柵で傷みがカバーされていないところや見た目ほど傷んでいないところなどあって、ややトリッキーな設定になっている。良いところを選べるのもライバルたちにない特権である。

 豪華メンバーだから拾い出すとキリがない。エイシンフラッシュもローズキングダムも決め手優先のデザインになっていて、ここも正直に乗るだけでサプライズはない。前にも行ける和田騎手鞍上ミッキードリームを穴馬として挙げておきたい。

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2011年10月29日 (土)

2011年のテスコボーイ

 サクラバクシンオーがノースフライトと死闘を繰り広げていたのは1994年だから、もう17年も前のこと。その年の2歳チャンピオンがサンデーサイレンスの初年度産駒・フジキセキだった。

 サンデーサイレンスが種牡馬デビューをして産駒が走りまくって日本の血統地図を塗り替えてしまった大嵐のような17年を、種牡馬サクラバクシンオーは生き延びた。けっして恵まれた環境で種牡馬デビューしたわけではなかったが、スピード豊かな上位種牡馬として確固たる地位を長きに渡って守り続けて、今春没した。晩年に残した最高傑作が、グランプリボス。

 テスコボーイに始まって半世紀近く日本独自に発展してきた父系の存続は、朝日杯とNHKマイルCを制した矢作厩舎の3歳馬に託されている。直父系を重視しすぎるのは実際的にはそれほど意味がないが、しかし骨董的価値だけであってもぜひこの系統には生きながらえてほしいものだ。

 以下、拙著『名勝負に学ぶ適性競馬論』サクラバクシンオーVSノースフライトの章から引用。

 サクラバクシンオーは現役時代にほとんどすべての可能性を試された馬だ。そういう意味では、隠された引き出しがなく、わかりやすい種牡馬だと言える。1400まではほぼ無敵、1600以上では善戦止まり。ダートもこなすが、より本領を発揮するのは時計の速い芝コース。こういった現役時代の傾向が、産駒の特徴としてもほとんど当てはまる。

(中略)

 父の現役時代も、気性が前向きすぎてタメが利きづらい馬だったが、脚質の不自由さは産駒も同様だ。脚をためるのが苦手なので、必然的に坂コースの成績が悪い。競馬場別で芝1200mの成績を調べると、ゴール前に急坂がある中山競馬場が谷になっていて、完全に苦手コースと言える。父はスプリンターズS連覇で名を上げたが、産駒にとって中山のGⅠは越えるに越えられない高い壁になっている。

 ということだから、中山で勝ってマイルG1を2勝しているグランプリボスはいままでのところ、あきらかに父を超えている。父の産駒の特徴としてもうひとつ、仕上がり自体は早いが成長力が豊富で、競走馬としてのピークは古馬になってから、というものがあるが、矢作師によればグランプリボスもものすごく良い馬体になって放牧から帰ってきたそうだ。

■京都11R 第54回毎日放送賞スワンS

 スワンSはグランプリボスの父サクラバクシンオーが勝ったレースだ。その年は阪神での開催だったが、日本で初めて1分20秒台の壁を破る当時としては驚異的なレコードでノースフライトに完勝している。この血統のスピードとスケールがもっとも良く表現されるのが芝1400で、いまの高速馬場も願ってもない条件だ。

 今回は豪華なメンバーとされるが、今年になってからG1を勝っているのはグランプリボスだけ。ギャラントアロー、タマモホットプレイが二年連続で勝ったこともあるように、1600のような体力勝負にならないぶん、スワンSは3歳馬が走りやすい条件である。狙い目はむしろ今回だと思う。

◎ 14.グランプリボス

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2011年10月25日 (火)

カタカナ血統の三冠馬誕生

 オルフェーヴル、完勝。ウィニングランを見守りながら三冠馬誕生の余韻を味わっていた京都競馬場が、一瞬凍り付いた。スタンド前で止まろうとする間際、オルフェーヴルが池添謙一騎手を振り落としたのだ。またやった! オルフェーヴルは新馬戦を快勝した直後にも同じ悪さをしでかした前科があった。まんまと落とされて苦笑いしつつも、池添騎手は手綱を放さず「三冠馬放馬」という事態には至らなかった。

 まったくこの血統は! ステイゴールド産駒の気の悪さは父譲りの筋金入りで、このレースで7着に敗れたフェイトフルウォーもデビュー戦の発走前に放馬して、しかもレースには勝ったという前歴がある。競馬場でこういう出来事を見るたびに、かつてビッグレッドファームで放牧中のステイゴールドに(柵越しに)噛みつかれそうになって、後ろ髪を引っこ抜かれたことを思い出す。ステイゴールド流のコミュニケーションなんだろうか。

 自分がひやりとした経験があるせいか、強そうな馬が現れてもステイゴールド産駒には全幅の信頼は置けない。だけど、池江泰寿厩舎のステイゴールド産駒は例外だ。ステイゴールドの現役時代、わがままなステイゴールドとまさに「格闘」していたのが調教助手時代の池江泰寿師だったからだ。以下、競馬王2006年4月号のインタビューから引用する(聞き手は筆者)。

--ステイゴールドではさんざんご苦心なさったと思うんですが。最後のシーズンは左側だけのブリンカーを着用して、引退レースの香港ヴァーズを勝ちました。

 もちろんブリンカーというのは良かったかもしれないし、ハミの変更も良かったけど、一番良かったのは「左に行っちゃダメだよ」と。

--教え込んだ?

 そうです。あの馬はすごくわがままなところがあったんです。栗東の坂路って、出口が坂を登りきった左側にあるから、ステイゴールドにしたら左に行ったら走るのをやめられる、という思いがあるんでしょう。だから、ふだんのキャンターでも、左に左にハミをさらっていくんですよ。

--それで左だったのか!

 坂路の左側っていうのは追い切りをする馬が通るじゃないですか。だから、馬の少ない時間帯に坂路に行って左側を走らせると、馬が引っ掛からないんですよ、ぜんぜん。けっきょくステイのわがままを人間が聞いちゃっていたんです。それを絶対させるものか、と。もう、それこそ格闘ですよ。歩くときから、左へ左へと行こうとするんですよ。だから、左に行ったら鞭を入れて怒って。納得して真っ直ぐ歩いてくれたら愛撫して。またがって一歩出たときから、絶対人間が言うことを聞かすんだ、ということを徹底して。そういう部分も実を結んだと思います。

--たんにブリンカーしたからとかハミを替えたからとか、そんななまやさしい問題じゃないんですね。

 道具もひとつの手段でしたけど、あの馬の場合、メンタルから来ている問題だったので、そこを考えてあげないとね。

 ステイゴールドとの格闘があって、もちろん全兄ドリームジャーニーでの経験もあって、また大成できなかった半姉アルスノヴァでの経験も糧にして、オルフェーヴルの三冠は成し遂げられた。父のステイゴールドだけではなく、母の父メジロマックイーンなど、オルフェーヴルの血統表には日本で走ったカタカナ馬名がずらずらと並ぶ。かつて民放のアナウンサーはディープインパクトを「日本近代競馬の結晶」と評したが、そのキャッチフレーズはオルフェーヴルの方がよりふさわしい。

 レース終了後のインタビューで、今後の目標レースとして池江師は迷わずに「凱旋門賞」の名前を挙げた。ディープインパクトチームの一員として悔し涙を流した池江師にとっては、今度はディープインパクトでの敗北も糧にして大業に挑むことになる。カタカナ血統の日本ゆかりの名馬だが、オルフェーヴル自体はフランス語から名前をつけられた。凱旋門賞への挑戦は、この馬の宿命だったのかもしれない。

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2011年10月23日 (日)

内か外かの菊花賞

 池江泰寿調教師には何度かお話を伺ったことがあるが、競馬ファンの視点を尊重している調教師のひとりだ。筆者はたまにトレセンに行くだけで厩社会では部外者なのだが、たまにトンチンカンになる筆者の質問もそらさずに受け止めて真摯に回答してくれた。騎手や調教師のインタビューは、聞き手が悪いと表面的な話に終わってしまうケースが多いが、池江師のインタビューはどれを読んでもわかりやすく、面白い。競馬ファンのために難しいところを砕いて語ってくれるからだ。

 オルフェーヴルのダービー制覇を受けた優駿のインタビューで、池江師はレース当日まで惨敗すら覚悟していたと語っている。雨の影響で内を通った先行馬が残る馬場になっていたからだ。それが変わったのは当日の午後で、みんなが通ったことで内がかなり悪くなって、馬場の真ん中からの差しが決まるようになった。これでオルフェーヴルの競馬ができる、とようやく自信を持ったという。

 今日は菊花賞。今季の京都競馬場は芝丈が短く、内が絶対的に有利という傾向が続いている。外枠を引いたオルフェーヴルにとって三冠への最後の試練と言えるかもしれないが、しかしレースまでは時間があるからなにが起こるかわからない。例年菊花賞ではバテる馬がいるので、内は渋滞してしばしば外を通る馬に流れが向く。どちらにしろ言えるのは「中途半端は良くない」ということ。池江師は今ごろなにを思っているのだろう。

◎ 14.オルフェーヴル
☆ 18.ショウナンマイティ

 ショウナンマイティは行きたがる面があるわりにゴーサインへの反応が鈍い。トモがまだパンとしていないからで、下り坂を利用して加速できる京都の外回りは合う。瞬時に反応できない馬だから内でスペースを狙う競馬で結果を出せるとは思えず、大外枠はむしろ絶好だと思う。準オープンを一回で通過した馬で、力量上位は明白だ。あとは流れが向くか向かないか。武豊騎手ともに一発を狙う菊花賞にしたい。

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