単勝110円、断然人気のセレンが負けた。一歩先に抜け出していたマズルブラストを捕まえ損ねて2着に敗れた。ファンの大部分は、強いセレンが勝つのを見てすっきりしたかったはずだが、願いは叶わずに、レース後はなんとも言えない空気が競馬場を包んだ。ディープインパクトがハーツクライに敗れた有馬記念を思い出した。
3番人気・上がり馬のロイヤルマコトクンがハナに立ってレースは始まった。大方の予想通りの展開だったが、2コーナーから向こう正面に差しかかるところで、折合を欠いたシャレーストーンが先頭に並ぶところまで一気に進出、にわかに波乱含みの様相を呈する。主戦の酒井騎手がライジングウェーブに騎乗したため、菅原勲騎手に乗り替わった影響があったのかもしれない。
二頭が雁行の形になってペースが上がり、5F目からの通過ラップが、12.5-12.0-12.3。いっさい息が入らない。二頭の離し逃げから距離を置いた3番手にロイヤルボスとクレイアートビュンが付けて、その後ろに戸崎騎手のマズルブラスト。セレンとライジングウェーブはそれをマークする位置に落ち着いた。
マズルブラストを管理する川島正行調教師から戸崎騎手への指示は「セレンより先に動け」だったらしい。指示通り、マズルブラストは動いた。残り4Fの標識を待たずに先頭の二頭を追いかけて行く。タップダンスシチーを彷彿とさせるような早仕掛けギリギリのロングスパートで、肉を切らせて骨を切る作戦だ。それをマークするクレイアートビュンとセレンも動かざるを得ない。
直線を向いても、依然ロイヤルマコトクンとシャレーストーンが横並びで競り合いを続けている。それに襲いかかるマズルブラスト。クレイアートビュンは外の進路をマズルに塞がれ、脚が鈍った先行二騎のために前も詰まって、一瞬行き場を失った。やむを得ず外に持ち出し、態勢を立て直す隙を突いて、マズルブラストがマークを振り切り、一気に先頭に立った。
ラスト1F、マズルブラストの勢いが衰えたところに、外からクレイアートビュン、さらにようやくセレンが迫る。しかし、今日のセレンは早めに動いた影響もあって、追い込む脚に勢いがない。ジリジリとしか差が詰まらず、外回りの長い直線もさすがに売り切れた。1/2馬身の差を残して、セレンを抑えたマズルブラストが今年の金盃を獲得した。
マズルブラストはホワイトマズル産駒のスタミナ自慢だが、不器用なところがあって勝ち味に遅かった。しかし、今季は精神的に一皮剥けたようで、折合に心境を示して自在性を身に着けた。それでも、大井の2000はコース形態的に上がり勝負になりやすい傾向があるのが不安材料だったが、前の二頭が引っ張ってペースを上げてくれたのは願ってもなかった。そしてその縦長の隊列を利用して消耗戦に持ち込んだのは、さすが戸崎騎手としか言い様がない。最後の1Fは13.3秒、脚が上がるギリギリのところまで持続力を引き出したのは見事だった。
セレンはずっと1600から1800を使われていて、2000の実績は前走の東京大賞典4着だけ。厳密に言えば距離に不安がないこともなかった。それでも上がり勝負になればなんとかなるはずだったが、予想外の消耗戦になったことで自身の限界が顕わになってしまった。先行有利の馬場だったことは差し引いたとしても、今回は力負けと考えるべきだろう。東京大賞典の4着は夢を持たせてくれるのに充分なインパクトがあったが、真の一流馬になるためには、まだ足元を固める必要がある。
クレイアートビュンは速い脚がないけど渋太い馬で、上がり勝負になりやすい大井の外回りは得意ではなかったが、それは距離の問題ではなかったことが今回の3着ではっきりした。直線で詰まる場面がなかったら、2着はこの馬だった可能性が高い。詰めが甘いので馬券的には扱いづらい馬だが、「ほんとうは強いんだ」ということを覚えておくとあとで良いことがあるかも。
ロイヤルマコトクンはこの距離だとスローに落とすしかないが、そうすると持ち味のスピードを活かすことができないから、つまらない馬になってしまう。シャレーストーンはあれだけ掛かりながら4着だから、たいしたものだと思う。馬体の充実は確認することができたので、気性の成長が待たれるところだ。