秋の中山・阪神は、例年だったら新馬戦は「一段落」する時期である。この開催デビューで大成したのは、最近ではディープブリランテがいるくらい。10月の東京・京都に向けての間奏曲みたいな開催だった。
しかし、今年はどうも様子が違う。とくに、阪神の新馬がなかなかメンバーが揃っているように映る。6月の阪神の頭数が揃わなかったのと、例年ならば札幌で使う組が函館を使わずに回って来たのと、両方の要因が考えられる。先週の「オーバー7」はぜんぶで4頭。こんなに多くなるとは想定外だった。
(評価点はいずれも暫定値)
○ライアンセンス=7
9月7日・中山・未勝利芝1600m
父ジャングルポケット・母メジロルルド(父サンデーサイレンス)
1番人気を裏切った新潟の新馬から一変。開幕週の中山芝で外々を回る、という掟破りの競馬で圧勝した。2馬身差2着のリクエストアワーが普通なら勝ち馬のレベルにあり、能力の高さは疑う余地がない。初戦は集中していなかった部分はあるが、頭高くドタドタ走っている現状では高速上がりに対応するのは難しかった。パワーと柔軟さに秀でたジャングルポケット産駒で、名牝メジロドーベルの孫。大型馬ということもあり、柔軟さは「緩さ」に繋がっていて、不器用さもそこに起因する。パンとすれば楽しみ。
○プロクリス=9
9月7日・阪神・未勝利芝1600m
父キングカメハメハ・母ライラプス(父フレンチデピュティ)
小倉の新馬は小回りでゴチャついて星を落としたが、負けたことによって、阪神芝1600mという牝馬の基幹コースを経験できたのだから良かったかもしれない。レース後に骨折が判明して離脱を強いられたが、軽症で春には充分間に合う。ゲートは出るし、馬込みでも我慢が利くし、鞍上の指示を待てる。真面目なキンカメ牝馬。最内から抜け出した脚は出色で、キリリとしたレースぶりは母のライラプスによく似ている。レース上手で数字面の裏付けもあるので、上のクラスでも楽しみは大きい。無事の復帰を祈るだけだ。
○アトム=8.5
9月7日・阪神・新馬芝1600m
父ディープインパクト・母シャイニングエナジー(父Rahy)
母はアメリカG1馬だが、日本での繁殖成績は持ち込みの1勝馬がいるだけ。杉山忠国氏のオーナーブリード馬で、春時点では情報も少なかった、という「穴のディープ産駒」。POGでは血統を信じて指名するしかなかったが、蓋を開けたら良い馬だった。スローペースだったので数字の裏付けは乏しいものの、2着のミッキーアイルと3着のライザンはいずれもノーザンファームの高馬。前が詰まる場面がありながら一気に差し切って、両馬とは能力の違いを感じさせたのだから、いったいどれだけ強いのか。遅生まれで、無事に成長してくれば相当稼ぎそう。
○ポーラメソッド=7.5
9月8日・中山・未勝利芝1800m
父チチカステナンゴ・母タイキポーラ(父トウカイテイオー)
初年度産駒が大不振に終わったチチカステナンゴ産駒。だけど馬の出来は良くて、春のシルク天栄ツアーでは金成調教師が「チチカスの代表産駒です」と豪語していた。福島の新馬初戦は回って来ただけだったが、一度使われて馬が一変。ペースが緩んだ3コーナーからぐんぐん上がっていって、坂を越してもゴールまで勢いがまったく鈍らなかった。上がり3Fはメンバー中最速だが、2位とは1.3秒の差だから、次元が違った。ふくよかな身体だが軽い歩様で弾むような走りで、スピードは充分。成長が間に合えばクラシックに乗れるだろう。