2013年9月14日 (土)

クラシックチャートwired~9月7日・8日

 秋の中山・阪神は、例年だったら新馬戦は「一段落」する時期である。この開催デビューで大成したのは、最近ではディープブリランテがいるくらい。10月の東京・京都に向けての間奏曲みたいな開催だった。

 しかし、今年はどうも様子が違う。とくに、阪神の新馬がなかなかメンバーが揃っているように映る。6月の阪神の頭数が揃わなかったのと、例年ならば札幌で使う組が函館を使わずに回って来たのと、両方の要因が考えられる。先週の「オーバー7」はぜんぶで4頭。こんなに多くなるとは想定外だった。

(評価点はいずれも暫定値)

○ライアンセンス=
9月7日・中山・未勝利芝1600m
父ジャングルポケット・母メジロルルド(父サンデーサイレンス)

 1番人気を裏切った新潟の新馬から一変。開幕週の中山芝で外々を回る、という掟破りの競馬で圧勝した。2馬身差2着のリクエストアワーが普通なら勝ち馬のレベルにあり、能力の高さは疑う余地がない。初戦は集中していなかった部分はあるが、頭高くドタドタ走っている現状では高速上がりに対応するのは難しかった。パワーと柔軟さに秀でたジャングルポケット産駒で、名牝メジロドーベルの孫。大型馬ということもあり、柔軟さは「緩さ」に繋がっていて、不器用さもそこに起因する。パンとすれば楽しみ。

○プロクリス=
9月7日・阪神・未勝利芝1600m
父キングカメハメハ・母ライラプス(父フレンチデピュティ)

 小倉の新馬は小回りでゴチャついて星を落としたが、負けたことによって、阪神芝1600mという牝馬の基幹コースを経験できたのだから良かったかもしれない。レース後に骨折が判明して離脱を強いられたが、軽症で春には充分間に合う。ゲートは出るし、馬込みでも我慢が利くし、鞍上の指示を待てる。真面目なキンカメ牝馬。最内から抜け出した脚は出色で、キリリとしたレースぶりは母のライラプスによく似ている。レース上手で数字面の裏付けもあるので、上のクラスでも楽しみは大きい。無事の復帰を祈るだけだ。

○アトム=8.5
9月7日・阪神・新馬芝1600m
父ディープインパクト・母シャイニングエナジー(父Rahy)

 母はアメリカG1馬だが、日本での繁殖成績は持ち込みの1勝馬がいるだけ。杉山忠国氏のオーナーブリード馬で、春時点では情報も少なかった、という「穴のディープ産駒」。POGでは血統を信じて指名するしかなかったが、蓋を開けたら良い馬だった。スローペースだったので数字の裏付けは乏しいものの、2着のミッキーアイルと3着のライザンはいずれもノーザンファームの高馬。前が詰まる場面がありながら一気に差し切って、両馬とは能力の違いを感じさせたのだから、いったいどれだけ強いのか。遅生まれで、無事に成長してくれば相当稼ぎそう。

○ポーラメソッド=7.5
9月8日・中山・未勝利芝1800m
父チチカステナンゴ・母タイキポーラ(父トウカイテイオー)

 初年度産駒が大不振に終わったチチカステナンゴ産駒。だけど馬の出来は良くて、春のシルク天栄ツアーでは金成調教師が「チチカスの代表産駒です」と豪語していた。福島の新馬初戦は回って来ただけだったが、一度使われて馬が一変。ペースが緩んだ3コーナーからぐんぐん上がっていって、坂を越してもゴールまで勢いがまったく鈍らなかった。上がり3Fはメンバー中最速だが、2位とは1.3秒の差だから、次元が違った。ふくよかな身体だが軽い歩様で弾むような走りで、スピードは充分。成長が間に合えばクラシックに乗れるだろう。

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クラシックチャートwired~2歳勝ち上がり夏の大総括

 夏の2歳戦が終了した。在籍頭数のルール変更(いわゆる2.5倍ルール)の影響で、6月の阪神は小頭数競馬が続出した。また、夏の北海道が函館での連続開催になったことで、函館に運ばず真っ直ぐトレセンに向かって、秋デビューに備えた「評判馬」に多かった(それは春の産地馬体検査の受検馬減で予想されてはいた)。

 それらの影響で、今夏の2歳戦は例年に比べて静かな滑り出しだったように思う。ここまでは仕上がり早い牝馬が幅を利かせている。4鞍あった2歳重賞は牝馬が全勝。いままで牝馬には厚い壁だった札幌2歳Sでもワンツーを決めた。もちろん、この時期牝馬の活躍が目立つのはいつものことだが、それでも例年ならコディーノ、グランデッツア、ゴールドシップ、ロジユニヴァースなど、核となるような牡馬が夏の2歳戦を賑わせていたことを思えば、今年は「これ」という牡馬が抜け出さないまま夏が終わった。

 9月1日終了時点で勝ち上がりは161頭。そのうち私の評価点で「エリート」の扱いになる7点以上は以下の22頭だった。

サトノアラジン

イスラボニータ
マイネルフロスト
ウインマーレライ
エルノルテ

7.5

マイネグレヴィル

レッドリヴェール
エイシンオルドス
スペランツァデーア
ピオネロ
クリスマス
ハープスター
サトノフェラーリ
ハイアーレート
オールステイ
クラリティシチー
プライマリーコード
エイシンキサナドゥ
ペプチドスピカ
デリッツァリモーネ
ミュゼリトルガール
プリンスダム

 あくまで暫定値なので、競馬王誌上に出すときには再調整を行う予定。「サトノアラジン一強」みたいな見映えになっているが、牡馬がスロースタートなのでこうなった。あくまで勝ち上がり時点の評価であって、番付的なものとは異なるので、あしからず。ハープスターが過小評価だったのは、スピード指数的な部分が伸びなかったから。

 評価の基準はそれなりに綿密で、たとえば8点ならばひとつに「来春のG1への出走が有望」=つまりそれだけの賞金を稼ぐだろう、ということ。7.5点以上をつけた6頭のうち、出走していないエルノルテとサトノアラジン以外はその後すでに賞金を積み重ねているから、こんな評価点でも役に立つこともあるよ、という証明にはなるだろう。

「7点に何頭も突っ込み過ぎだろう」という批判を受けてもっとも。これは誌面に出すまでの再調整の課題である。7.5点候補は、サトノフェラーリ、プライマリーコード、デリッツァリモーネ、ミュゼリトルガールあたり。ハープスターから上は9月号で評価済みだが、当時は0.5点をほとんど使っていなかったので、この部分は評価にばらつきが出てしまう。

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2013年8月30日 (金)

新潟天才試験

 過去の新潟2歳Sには「前走新潟組優位」という傾向があったが、今年のメンバーを見ていたらそうは思えなかった。「このレベルの素質馬が使ってきたら、新潟経験の優位性なんて消し飛ぶんじゃないか」と思えたので、素材優先で印を打った。そうしたら今年は新潟組優位の傾向は吹き飛んで、中京-東京-中京という決着になった。状況を見て傾向の変化に追いつくことができて、「現場派」としては胸を撫で下ろす結果だった。

 これについては、今年から競馬王の仕事で「勝ち上がり2歳馬全頭評価」をやらせてもらっている効果が大だった。10点満点の評価だが、このレースに出ていた8点はイスラボニータ、7点はハープスターで、あとは全頭7点未満。この二頭の馬連1640円は買わざるを得ない。といっても「俺すごいでしょ?」が言いたいわけではなく、おそらく誰がやっても似たような評点になるでしょう、こんなもの。ただし、突出馬の偏差をよりただしく実感するためには、全馬について同じスタンスからジャッジする必要がある。それだけのことだ。

 威張れるのはここまで。ハープスターの7点は大間違いだった。イスラボニータやマイネルフロストに8点を打ってハープスターに7点しか打てなかったことは、「勝ちっぷり優先主義」に堕していると言われても返す言葉がない。「松田博資厩舎・早期デビュー・ディープインパクト産駒」ということで、去年ラウンドワールドに期待しながら結果がもうひとつだったことが自分の中で尾を引いてしまった。誰に謝るわけではないが、反省する。

 反省したところでハープスター。外を回って殿からの直線一気で3馬身圧勝。しかも最後は物見をしているし。ゴール板がなかったらどこまでも伸び続けたんじゃないか? この馬自身、けっしてスピードが前面に出ているタイプではないのに(むしろ逆)、スピード寄りの舞台でスピード馬を蹴散らしてしまったところに凄みがある。エンジンの掛かりは速い方ではなかったが、一度トップスピードに乗れば性能が違う。新潟の長い直線を味方に、いつまでも気持ち良さそうに走っていた。

 ディープインパクト産駒は走らせてみないとわからない、とよく言われる。ディープインパクト産駒最大の武器は、走りが上手で、速い脚をずっと続けられるところだと思う。そういう意味では、ディープインパクトに関しては天才が遺伝する。少なくとも遺伝する可能性が高い、と思う。

 ただその才能については「(レースのスピードで)走らせてみないとわからない」という部分が大きい。馬体と調教だけで見極められる人も中にはいるのかもしれないが、まだ大勢ではないはず。今夏の新潟外回りには長い直線を求めて、ディープインパクト産駒の2歳馬が14頭も出走した。そのなかで勝ち上がったのはハープスターを含めて3頭だけ。「天才的な走り」を見せたのは、サトノアラジンを含めて2頭だったと思う。それ以外の大多数の馬は「新潟天才試験」に落ちてしまったわけだが、しかし14頭のうち天才が2頭もいれば、充分じゃないか。

 今夏の新潟からはクラシックへ向けて二頭。サトノアラジンとハープスターが旅立った。

※ブログ上での2歳勝ち上がり馬企画、「やるやる詐欺」になっているが、来週の木曜まではどうしても身体が空きません。夏開催が終わったのを機にリブートする予定です。謝らないが、反省します。

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2013年8月20日 (火)

札幌記念回顧

 札幌記念の勝ちタイムは2分6秒5。国内の重賞では滅多にお目にかかれない時計で、たとえばフランケルが昨秋のインターナショナルSを勝ったタイムが2分6秒59(馬場状態はGood to Firm)。ただしこのレースは距離が10F88ヤードで2000より長い(約2092m)。

 負けた馬に乗っていた騎手たちが一様に「こんな馬場では」というコメントを出しているが、JRAの芝競馬が普段狭い範囲に管理された馬場状態で行われているだけで、今回のような決着も競馬の一部分だ。最後は全馬が歩いていたが、歩くことを怖れずにどんどん攻めていった武豊騎手は、さすがに日本の騎手の中では経験の質量がずば抜けている。

 それはたとえば、海外遠征に行って帰ってきた馬が、たとえ惨敗直後でも国内の競馬では格の違いを見せるように好走するのと似ている。先週のクラスターカップで5番人気の低評価に反発して2着したタイセイレジェンドを見て感じたことだが、われわれはほんとうに「井の中の蛙」だと思う。大海の広さを知っている一部の人間だけが積極的に海外に打って出て行って、多くは報われずに帰ってきて笑いものになる。笑われるべきなのは、井の中から出ようとしない蛙たちの方なのに。

 皐月賞馬・ロゴタイプは好位追走から、武豊=トウケイヘイローの仕掛けに追随したが振り切られて失速、5着に敗れた。父系はたしかにサドラーズウェルズだが、吉田照哉氏が「この馬はサンデーサイレンスの再来だよ」というように母父が出たシャープな体形で、実際に高速馬場でのスピード決着で高いパフォーマンスを見せている。くわえて、3歳世代のクラシック路線のレベルには疑問を持っているので、今回の馬場では厳しい戦いになるものと予想していた。実際に、前走函館組が上位を独占した中、待機馬の中で掲示板に乗ったのはこの馬だけ。この5着は称賛すべき結果だと思う。極悪馬場での消耗戦を経験したことは、今後に向けて糧になる。

 トーセンジョーダンは蹄の大きい馬で、返し馬から走りにくそうにしていた。身体はできていたので次走は一変もあり得る。2着のアスカクリチャンと3着のアンコイルドは、鞍上ともども前走でトウケイヘイローと戦っているので、ライバルの強さは身にしみてわかっている。無理についていかずに自分のペースに徹したことで2・3着に浮上した。

 トウケイヘイローは2・3歳時は夏競馬を新潟で戦っていた。4戦2勝2着1回だから、高速の新潟もまったく悪くないのだが、今夏は北海道に腰を据えたのが大正解だった。使われながら凄みをまして、まさに本格化。函館は忘れられない土地になった。胴長の体形は母父ミルジョージの遺伝を確かに受けている。ミルジョージのスタミナに対する絶対の信頼は、90年代前半までに競馬をやっていた人間以外にはほとんど理解できないものだろう。これがひとつ、経験の量ということだ。

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2013年8月16日 (金)

お盆の交流三連戦を一気に回顧

■サマーチャンピオン

 サマーチャンピオンの翌日にクラスターカップがあるから、渋滞するダートOP短距離路線も、お盆は多少は混雑が分散する。サマーチャンピオンには、普通だったら交流重賞の賞金順になかなか入れないクラスのエーシンウェズン、ガンジスの出走が可能になって、結果も両馬のワンツーで終わった。

 3歳牝馬のサマリーズは、古馬の牡馬と混じるとさすがに非力さが目立った。1.27.0のタイムはいかにも遅い。古馬の短距離OPを引っ張るにはまだ力不足だったということ。このペースではエーシンウェズンが捲って動くのは当然のことだし、それを受けたガンジスも手応え充分だったが、前に入られたときに両後を落鉄、最後まで捕らえきれずに終わった。

 ダイショウジェットは一息入っていたのとトップハンデもあるが、基本的には前がバテないと出番は回らない馬で、5着止まり。コスモワッチミーは交流の壁に苦しみながらも力をつけていた。時計が掛かったのにも助けられて3着入線。

■クラスターカップ

 ラブミーチャンとタイセイレジェンド。ビッグネームの6歳2頭に、上がり馬ノーザンリバー、スノードラゴンの5歳2頭。この条件としては珍しく、4頭が0.1差でゴールインする接戦になった。タイム差はわずかだが、前で仕切ったのは6歳2頭だし、5歳の両馬とは斤量差もある。トップクラスの壁はまだまだ厚い、と思わせる結果だった。

 ラブミーチャンが一番ダッシュが良かったが、無理に行かずに3番手に控えてからの抜け出し。今季はこの形がすっかり板についた。心身ともに充実している。例年通りならこのあとは東京盃で、今年はおそらく1番人気になる。タイセイレジェンドは59キロを背負っていたぶんダッシュは鈍く、さらに内のドスライスにハナを譲る形。普通に考えれば厳しい状況だが、ラブミーチャンに交わされてからも簡単に止まらず、2着争いでは余裕があった。ドバイ遠征を経験した効果はあきらかだ。今後は状態面の上積みも期待できる。順調なら、オーバルスプリントを叩いて東京盃へ。ラブミーチャンとの再戦が楽しみだ。

 スノードラゴンは2頭を負かそうと早めに動いたが、4角で外に振られて最後甘くなった。ノーザンリバーは内の空いたスペースを突いて最後はよく伸びたが、あの乗り方では頭は遠かったと思う。セレスハントは二番が利かない馬で、勝った次戦の今走は5着。走って休んでの繰り返しをもう2年半くらい続けている。買うタイミングは今回ではなかった。

■ブリーダーズゴールドカップ

 中距離路線は番組が少ない分、短距離路線に輪をかけて「同じようなメンバー」になることが多い。シビルウォーは去年までこのレースを2連覇しているが、相手関係もレース展開もリプレーを流しているような二年間だった。今年はようやく若くて生きのいい挑戦者・ハタノヴァンクールが登場。勝ちパターンに入ったシビルウォーを2馬身半差で降した。一番重い58キロを背負っての完勝で、シビルウォーの時代に幕を引いた。先行力がなく器用さも足りないが、スタミナ比べには自信がある、という馬で、なるべくしてなった門別チャンピオンだ。ランフォルセは逃げられたのが幸いして3着。グランドシチーは前走で早めに動いて止まり、今走は脚を温存して届かずという迷走状態。この馬はやっぱり、中山がぴったりなんだよなあ。

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2013年8月13日 (火)

レッドスパーダ、真夏の新潟で復活

 直線に入ったところで逃げていたナンシーシャインが故障を発生。予後不良となった。ナンシーシャインはいつも一生懸命に走る馬で、1年足らずの競走生活だったが、ほとんどすべてのレースで人気より上の着順でゴールした。楽々逃げ切るかと思われたリベルタドーレス(現在1000万下)を、ゴール寸前で大逆転した新馬戦は印象に深い。今後は、競り名簿にブラックタイプで記されるこの名を見るたびに、小柄な牝馬の頑張りを思い出すことにしよう。

 目前の逃げ馬が突然失速しても、レッドスパーダと北村宏司騎手は慌てない。後続とのリードは常にセーフティで、1馬身1/4差をつけてゴールイン。4歳時の東京新聞杯以来、3年半ぶりの重賞2勝目を挙げた。3~4歳時には、スプリングC、NHKマイルC、阪神Cで2着と、頂点に近い場所で競馬をしていた馬で、立ち直ってくればローカルG3では元値が違った。

 「復活」の二文字は関屋記念のキーワードで、ここはフォントを大きくしてもいいくらいだ(面倒臭いからやらない)。実績馬に有利な別定重量になっているので、重賞勝ち実績はこのレース好走の必須に近い条件だが、とりわけ7歳のサイドワインダー、7歳のカンファーベスト、6歳のカンパニー、6歳のレインボーペガサス。「オッサン競走馬がもう一花を咲かせるレース」と私の脳内データベースにはインプットされている。まあ別にオッサンでなくてもいいのだが。

 ジャスタウェイはまたもや出遅れが響き、追い込み届かず2着止まり。新潟2歳S同様に「新潟マイルG3で1番人気で2着」となった(2年ぶり2回目)。重賞2着はこれで4回目。ここまで続くと馬券下手の私でもさすがに学習する。前走は単勝を買って痛い目に遭ったので、今回◎はこの馬に置きながら、買った馬券は馬複と三連複。ゴール前の接戦も安心して見ていられた。しかしまだ、馬単で2着付けするところまでは、この馬に対する愛情は薄れていない。愛が冷め切る前に、早くどこかで重賞を勝ってほしいものだ。単勝を買わずに応援したい。

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2013年8月11日 (日)

サトノアラジンとコスモス賞

 新潟5Rのパドックに並んだチーム・サトノアラジンの面々。向かって左から池江泰寿調教師、里見美絵子夫人、里見治オーナー、一人置いて戸崎圭太騎手。ん? 一人置いて? 誰だ、あのみんなから挨拶される老紳士は? と思ってよく見たら池江泰郎元調教師だった。池江泰郎氏は今年の2歳世代から里見オーナーの馬選びのアドバイザーを務めている。いまは無役だが、この人が競馬場に現れたら人が集まってくるのは自然なこと。心なしか泰寿先生が所在なさげにも見えたのは、まあ気のせいですね。

 508キロでパドックに現れたサトノアラジン。脚捌きにはまだ覚束なさが残り、「とりあえずレースに使えるところまで仕上げました」という状況。そんな「まだまだな仕上げ」の愛馬を前にしても、チーム・サトノアラジンの面々の笑顔は絶えることなく、それはレース後も変わらなかった。ゆっくり抜け出して後続に3馬身半の着差をつける圧勝。あの体つきでこれだけしっかり走れるのは、センスと運動神経の証明だ。ディープインパクト産駒はこの新潟で続々デビューしながらコロコロ負け続けてきたが、ようやく真打ちが現れた。コスモス賞のサトノフェラーリをパスして、里見夫妻が新潟競馬場に臨場するのも当然ですな。

 ただし、現状の馬体的完成度ではサトノフェラーリの方が上だ。たぶん、いまのサトノアラジンでは小回り函館のオープンは勝ち切れない。サトノ軍団の一番槍・サトノフェラーリは、新馬に続きコスモス賞でも1番人気に支持された。先に抜け出したマイネルフロスト、マイネグレヴィルを追いかけて、結果はタイム差なしの2着に敗れたが、札幌2歳Sに向けた前哨戦としては上々の内容だった。

 2頭のマイネ(ル)はスローの展開に恵まれた1・3着に見えるかもしれないが、初コースと輸送という不利をはねのけての好走だったことは軽く見るべきでない。滞在で調整できる次走はもっと状態を上げるはずで、3頭の決着は次走に持ち越し、ということでいいだろう。クローバー賞がないぶん、今年はなかなか面白いコスモス賞だった。

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2013年7月 8日 (月)

先々週の新馬・未勝利

●土曜福島の芝1200未勝利は、前走で果敢に阪神に遠征したマイネルディアベルが変わり身を見せて快勝した。『競馬王のPOG本』の産地馬体検査レポート静内編で誉めた馬だ。父のナイキアディライトは中央競馬での実績がほとんどない(この馬が2頭目の出走で初勝利)。それにもかかわらず採り上げたくなるのだから「いかに馬体が良いか」ということ。距離は延びても大丈夫そうだし、母系はしっかりしているので、マイナー種牡馬だからと言って甘く見ていると、痛い目に遭うかもよ?

●土曜福島の新馬戦は、この開催唯一の芝1000m戦。先に抜け出したフラワーハートをエタニティタイムが猛然と追い上げて、両馬の馬体が並んだところがゴールだった。二頭ともテンのダッシュ力はほぼ互角だったが、内枠のぶんエタニティタイムの進路が窮屈になって、わずかに届かなかった。1000m戦だけにひとつのロスが明暗を分ける結果になったが、両馬とも水準以上の力量は充分にある。1000m戦といっても低く見る必要はない。とくにエタニティタイムの次走は「忘れずに狙おう」レベルだ。

●日曜福島の芝1800新馬では、先団追走から抜け出したパシフィックギャルが競り合いを制して1番人気に応えた。ゼンノロブロイ産駒の2歳馬は良血が目白押しで、今年が勝負の年と言われながら、なかなか勝ち上がる馬が現れなかったが、ようやくこの馬が連敗を止めた。大柄の牝馬でモサモサした走り。いかにもゼンノロブロイ産駒らしいメリハリに欠くレースぶりだったが、福島コースなのでスタミナが活きた、という格好。力押しで初戦を突破した。牝馬らしからぬレースぶりだったが、中距離志向の強い牝馬は上のクラスでは牡馬との戦いを強いられるので、その道のりは平坦ではない。もっとスピードの要求されるコースに行ったとき、どんな武器で戦うのかが今後の課題になる。

●日曜福島の芝1200新馬では、一本被りの人気になったアポロスターズが好ダッシュから番手に控え、手応え充分に直線に向いたが、楽に運んだわりには追われてからがモタモタしていて、最後は後続の急追に遭ってクビ差の辛勝だった。父はアポロ軍団のハウス種牡馬というべきアポロキングダム。クズが少ない種牡馬で、JRAでの勝ち上がり率50%は立派なものだ。芝もダートもこなすが、レースぶりが一本調子なので上のクラスでは勝ち味が遅く、なかなか大物は現れない。と思っていたら、4歳のアポロマーベリックが東京ジャンプステークスを勝ってしまったので、大物が出ないというのは訂正。アポロスターズは恵まれた体格をしており、一度ダートでの走りも見てみたい。

●土曜中京の芝1400m未勝利は、阪神2週目のダンツキャノン組が人気の中心になったが、それらを従えて先頭でゴールしたのは、阪神3週目のヤマニンアリエッタ組から中2週での転戦だったウインスプラッシュ。新種牡馬マツリダゴッホ産駒として2頭めの勝ち上がりになった。好スタートからハナを譲って2番手からの競馬。直線では早めに抜け出しながらも最後まで脚色が鈍らなかった。前走の新馬戦ではスローペースで馬群ひとかたまりから切れ味勝負になって4着に沈んだが、2戦目でまともなペースになったことでスピードを活かすことができた。阪神の新馬は小頭数でおかしなレースが多かったので、折り返しでは着順が簡単に入れ替わる。

●土曜中京の芝1400新馬、牝馬限定戦は、ディープインパクト産駒のエルノルテが断然人気に応えた。2戦2勝で若駒Sに進んで1番人気になったアドマイヤオウジャの全妹。母のシーズオールエルティッシュはアメリカG2勝ちだがどちらかと言えば地味な血統で、プロフィールというより産駒の馬体や走りの良さで評価を上げているお母さんだ。エルノルテは前半ゆっくりとレースに入り、直線で鋭い脚を使うという兄同様のレースぶり。抜け出したあとモズハツコイの追撃を受けて頭差まで詰め寄られたが、ハミをとったりとらなかったり、まだ真剣に走っていない現状で結果はしっかり出して、時計も上々。さすがは素質馬というデビュー戦だった。

●日曜中京の芝1600新馬は、関東から遠征したマイネルメリエンダが人気のリラヴァティとの叩き合いに競り勝った。スローな流れを前に行って後続を待ち受ける形で、最後の坂を上がってからグイッと伸びた。仕上がりの良さとセンスの高さもさることながら、調教捜査官井内利彰さん推奨の「中京競馬場での美浦坂路調教馬」ということが少なからず勝利に寄与したと思う。キャリアが薄い(というかゼロの)新馬戦では、類似したコースを走り慣れているメリットは大きいだろう。

●日曜中京の芝1400新馬は、好発から2番手に控えたコウエイタケルが直線に向いても脚色が衰えない。上がり3Fもメンバー中最速をマークして、後続には影も踏ませない快勝だった。人気馬が何頭か自滅したレースだったが、まともに走ったとしてもこの馬の走りの上を行くのは難しかっただろう。ステイゴールド産駒は気持ちで走るタイプが多く、調教はもうひとつでも実戦で変わる馬が多い。全兄はダートでオープンまで行っているセイカプリコーン。調教の地味さゆえ前評判が低かったので、この強さはサプライズだった。この週の勝ち上がりでは文句なくナンバーワン評価。クラシック向きかは微妙だが着実に出世しそうだ。

●土曜函館の芝1200未勝利は、函館で最初の折り返し戦。オールパーパスの2着だったツクバジャパンが、ファイトバックの2着だったドラゴンスパンの追撃を凌いで逃げ切った。前走時に「(オールパーパスだけでなく)この馬もステークスの出走表に名を連ねることになるのではないか」と書いたとおり、無事に勝ち上がって函館2歳Sに駒を進めることになった。着差は僅かだが、終始マークを受ける展開でけっして楽な競馬ではなかったことを思えば悲観する必要はない。連続開催を見越して馬場が硬めのセッティングになっていることを思えば、この馬のスピードは重賞でも脅威になる。

●土曜函館の芝1000新馬は、断然人気のビービーブレインがスピードの違いで圧勝した。本馬は外に逃げ気味だったのにかかわらず、3コーナーでは後続を振り切ってしまうほどで、はっきりと相手に恵まれたレースだった。ここの負け組は、大きな変わり身がないかぎり次走以降も狙いづらい。ただビービーブレイン自身はまったくの楽勝だったし、時計も水準クラスで上積みも見込めるので、函館2歳Sでもそれなりに注目を集めるだろう。

●日曜函館の芝1200新馬は、ゲートを勢いよく飛び出したクリスマスが快調に飛ばし、4コーナーでは早々と後続を振り切って直線は独走。2歳レコードをマークして7馬身差で圧勝した。仕上がり早の小柄な牝馬で、JRAブリーズアップセール出身。プロフィールから判断して早咲きという可能性は否定できないが、圧巻のパフォーマンスだった。ただ、控える形になった場合になにができるだろうという点については、個人的には疑問を持っている。ステークスではこの馬と同等以上のダッシュ力を持つツクバジャパンがいる以上、簡単な競馬にはならないだろう。

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2013年7月 6日 (土)

先々週の新馬・未勝利

●最終週の東京新馬は、土曜の芝1400牝馬限定戦がダイワメジャー産駒マーブルカテドラル。人気のディープ牝馬・レヴアップスピンが伸びあぐねる脇をこじ開けるようにすり抜けた。上がりの速い競馬で、ロスなく立ち回れた操縦性の高さが勝利に直結した。日曜の芝1600新馬では、ゴールドティアラの娘やルルーシュの全弟が人気になったが、正直メンバーレベルはもうひとつだったように思う。楽なペースで行った先行勢が粘れず、譲り合いのようなレース展開を、大外に出したマイネグラティアが一刀両断、突き抜けた。土曜の芝1600未勝利は、馬場の回復が遅れて重馬場。積極的に逃げたウインイルソーレが淀みないペースの脱落戦に持ち込んで後続の追撃を凌いだ。父はファスリエフ、ダート戦のようなラップ推移だった。

●阪神土曜の芝1200新馬は、武豊のサクラバクシンオー産駒スマートエビデンスが逃げて、前半3Fが35.5秒。それほど速いペースとも思えなかったが、馬場の悪い内を通った影響か、坂を上がって急失速。先行した3頭が総崩れになり、その後ろを走っていたクリノジュロウジンがあれよあれよと突き抜けてしまった。単勝79倍。前週のダンツキャノンに続いてタニノギムレット産駒が大駆けした。

●日曜の芝1800新馬は、1000の通過が66.1秒という超スロー。またまた上がりだけの競馬になった。渋った馬場を気にしてハミをとらなかったイダスがまず4コーナーで脱落。5頭横一線の追い比べは、「速い脚がどれだけ続くか」という走りの効率と正確さを競うような展開になって、体力面はそれほど問われないまま終わった。勝ったのは大外を回ったピオネロだが、伸びない内を突いて2着したレッドラヴィータも内容的には劣らない。ただ両馬ともこの結果を持って序列上位とは言い切れないように思う。

●日曜の芝1600未勝利は、開幕週のレッドリヴェール組対2週目のダンツキャノン組という図式。直線でレッドリヴェール組のタイセイララバイとピークトラムが抜け出したところに、外からダンツキャノン組が襲いかかる。ティーエスハーツ、さらにスペランツァデーアがズブズブと突き刺して大勢をひっくり返した。レッドリヴェール組は5頭立ての超スローで、ほとんど再現性のないレースだったし、ダンツキャノン組も1400戦とは思えない上がり勝負で、スペランツァデーアは8着に敗れながらも上がり3Fは最速をマークしていた。この開催の阪神新馬は、小頭数で道中の摩擦の少ない競馬ばかり。いろいろとおかしかった。

●函館土曜の芝1200mの牝馬限定新馬は、先団の直後で指示通り動いたシュシュブリーズがすんなり抜け出して人気に応えた。時計は平凡だが、スピードが勝ったタイプではないので、距離が延びた方が良さが出そう。土曜のダート1000m新馬は、1・2番人気がスタートで出遅れるという波乱の幕開け。抜群のダッシュ力ですぐさま挽回した2番人気タマモエスカルゴは、4角で早々と後続を振り切って完勝。一方1番人気のフクノドリームは、揉まれて一度下げて外を回す形になり、レースが終わってから追い込んで2着。もったいない競馬だった。函館日曜の芝1200m新馬は、先行2頭に差し2頭、4頭が横並びになったところがゴール板。大接戦を制したのは1番人気のファイトバックだった。着差は僅かだが、前が残る流れだったし、外に出すのが遅れたにもかかわらずきっちり届いたし、内容的には余裕のある勝利だった。

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2013年7月 5日 (金)

メーデイア、砂の女王様になる

 昨年一年間にJRAで行われたダートの重賞・オープン特別は全部で51レース。そのうち、牝馬が連対したのは何例あったかというと、たった2鞍だった。3歳のオープン特別・昇竜Sを勝ったレッドクラウディアと、古馬のG3・プロキオンSを勝ったトシキャンディ。両方短距離だというのは偶然ではないだろう。かつてはファストフレンドやホクトベガみたいに、ダートの一線級で牡馬と互角以上に戦える牝馬もいたが、最近では牡牝の格差は歴然としている。

 それでもスピードを活かせる条件ならばわずかに食い込む余地もあって、その希少な例外がラブミーチャンということになる。JRA所属ではないが、地方交流重賞をこれまですでに3勝。並みいるJRAの強豪たちを打ち負かしている。偉大な馬だ。その重賞3勝の第一歩が2歳暮れの全日本2歳優駿だった。そして、ラブミーチャンに続く牝馬の全日本2歳優駿勝ち馬が、水曜の川崎で走ったサマリーズ、ということになる。

 水曜に川崎競馬場で行われた牝馬限定の地方交流重賞・スパーキングレディカップは、3歳のサマリーズと5歳のメーデイアの初対戦になった。逃げるサマリーズを2番手から追撃したメーデイアが直線半ばで捕らえて逆転、古馬の矜持を示した。ただ、斤量の恩恵があった(古馬とは4キロ差)とはいえ、3歳のこの時期に古馬相手に互角の戦いができたのだから、サマリーズもやはり並の馬ではない。いつかこの馬の時代が来るのではないか。

 2番人気に支持されたレッドクラウディアは4歳馬。強い5歳と強い3歳を一列後ろから追いかけたものの、コーナーで離されて3着に終わった。おそらくこの馬は、小回りの川崎はあまり向いていない。去年のこのレースも3番人気で4着だった。直線が長い大井やスパイラルカーブの船橋ならばもっと良い競馬ができるはず。今回は苦手な川崎で最後まで脚を使って0.5秒差だから、逆転できないほどの力量差があるわけではないだろう。

 今後の問題は、地方交流重賞の数少ないJRA枠に上手く入れるか、ということになる。この馬は収得賞金が1605万円なので、ギリギリ降級ができないのだ。ダートのオープンクラスで牝馬が牡馬を相手に賞金を加算することの難しさは冒頭で触れたとおり。今回も当初は補欠だったわけで、今後も番組選択には難しさがつきまとう。

 メーデイアにとって今回は、川崎も初めてならナイターも初めてだったが、牝馬らしからぬ落ち着きがこの馬の取り柄で、この日のパドックでも一人引きで楽々と歩いていた。サマリーズをライバルと見て楽をさせなかった浜中騎手の戦術眼も冴えて、大井・船橋・川崎と牝馬重賞を3連勝。めでたく砂の女王様になった。なによりも、小回りの川崎を難なく克服したことで、金沢で行われるJBCレディスクラシックに向けて視界が大きく広がった。

 南関東のエース・クラーベセクレタは、復活を期した一戦だったがよもやの殿負け。今回は460キロ台まで体重を絞ってきたが、馬体の張りは不充分だし良いときのフォームで走れていない。どこか身体に気になるところがあるのかもしれない。今回のパドックでは前捌きの硬さが目に付いた。一昨年の東京ダービー馬、このまま終わるわけにはいかない。

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